いやーまいった「焼き場の山岡さん」2009年8月(DSS:ルート50)
「焼き場の山岡さん」
居酒屋の焼き場といっても主にやきとり中心である。この横丁ではほとんどが焼き鳥ではなくやきとん(豚)が多いが、このお店は、焼き鳥それも2種類だけでねぎまとひな肉しかない。山岡さんは、年齢は20代前半と若いが髪型は元暴走族らしくオールバックリーゼント、口調は私だけには強気であるが他の仲居さんやマネージャー、板前さんには至って弱腰で丁寧である。私に話した後に他の人に話す時などは思わず笑ってしまいたくなるくらいだ。「やきとり上ったよ。これ三番テーブルによろしくな。」そのすぐ後に仲居さんが「山岡君、カウンターのやきとりまだあ」と声がかかると「あ、はいすみません、今上がります。あと少しお待ちください。」 という感じでアンバラスがまた楽しくこの仕事の雰囲気を心から柔らかくしてくれる。元暴走族とは思えない生真面目さは、この料理の世界で頑張ろうと考えているのかなと思わせ、私に対するでかい態度もなぜか心から許せてしまうのである。
学校が終わってお店に行くといつもすでに白衣に着替えて焼き場の掃除をしている。それが終わると本店からすでに串となっている焼き鳥を冷蔵庫より取り出し、鳥は油が多いのとお客さんに早めに出せるように、した焼きを始める。その焼台は一列しかのせられないが約20本を一度に焼くのである。左から並べ始め焼き始めると、白い煙が出始める。焼き鳥を焼くにおいが出始めると換気扇を回し始め、店内に煙が充満しないように注意する。あくまでもした焼きであるので鳥の身の肌色部分が白くなった時点でひっくり返す、その作業を2回ほど続けて、した焼き終了となる。「パチパチ、じゅー」 という独特の焼き音は見ているだけでも食欲をそそる。思わず「1本もらえませんか」なんていいたくなる。
以前は炭で焼いていたようであるが、それだと焼き方難しくまた火の管理ができるようになるには時間がかかるため、今はガス焼いているそうだ。焼き鳥はした焼きの終わるとアルミ製の四角いバットのようなものに入れられ、お客さんから注文されるまでそのバットの中でじっと出番を待つのである。この作業を5回ほど100本ほど焼いて準備終了となる。
お店があく前から外から見える焼き場は、通りのお客さんや外人が立ち止まって見たりして、お店の雰囲気を醸し出す重要な要素の一つとなっている。「山岡さん、焼くのは難しんですか」と聞くと「うんそうだな、やっぱ簡単じゃないよ、うまく焼けるようになるには時間がかかるさ。」との返事。焼き鳥を焼く時間は短いけれども焼き鳥の焼き方一つで味が違うとわかるのは、後日いろんなやきとり屋に行ってわかることになるが、この時の焼き場の山岡さんは頼もしく見え、やきとりもこの横丁で一番と確信していた。暴走しない「生真面目焼鳥一丁できあがり!」