開業融資における金銭感覚の麻痺と公私混同のリスク(DSS:危機管理)
クリニック開業において、苦労せずに受けられた融資は資金の大切さを見失わせる原因となります。金銭感覚が麻痺した状態で業者の甘い罠に乗ってしまうと、カモにされ最終的には医師としての本来の道を失うことにもなりかねません。開業資金や投資に関する正しい知識と危機管理が求められます。
開業融資における金銭感覚の麻痺と公私混同のリスク
クリニック開業時の融資は、業者やコンサルタント、税理士などが事業計画を作成しお膳立てしてくれるケースが少なくありません。その結果、資金調達に苦労しない分、融資を受けられる有難みを実感できない傾向があります。
手元に余裕のある融資資金があると、事業用資金であるにもかかわらず個人的に流用してしまう事例も見受けられます。事業計画通りに患者数が増えず、追加資金が必要になった段階で初めて金融機関の厳しさを知ることになります。
どのような資金であっても大切に管理しなければなりません。事業資金と個人資産を明確に分ける意識が欠如し、「自由に使える資金」と誤認して資産形成に流用すると大きな損失を招きます。銀行やリース会社以外の金融業者から一度でも借り入れをしてしまうと、借りることへの抵抗感が薄れて泥沼から抜け出せなくなる恐れがあります。
金融機関が利用枠内での追加融資に応じるのは、経営改善によって利益を出し、確実に返済してほしいからです。決して事業内容や個人の信用を評価しているわけではなく、貸し付けた資金を確実に回収するための措置に過ぎないことを理解しておく必要があります。
医師を狙う悪質業者と危険な投資の罠
医師は事業が順調で一定水準以上の所得があれば、容易に融資を受けられる傾向があります。これは安定収入が見込める職業属性に対する評価であり、必ずしも個人信用の高さによるものとは言えません。中には、第二担保であっても高金利で融資を持ちかける金融業者も存在します。そうした危険な業者に足を踏み入れると、あらゆる手段を用いて資金回収の圧力をかけられることになります。
医師が標的にされる主な手口とリスク
- ハイリスク投資との連携:リスクの高い金融商品や不動産投資を勧め、損失が出た医師を提携先の高金利金融業者へ誘導する。
- 継続的な搾取:数百万程度の資金を気軽に融通し、高収入が続く医師を「優良顧客」としてマークして逃げられない関係を築く。
- 労働による拘束:金融商品投資で数千万円規模の負債を抱えさせられ、金融業者が運営するクリニックで勤務を強いられる。
本業に専念しトラブルを回避するためのポイント
本来の融資審査は厳格であり、担保が不足していれば融資額は減額されるのが通常です。医師という職業は開業に失敗して借入金が残ったとしても、勤務医として返済を継続できる見込みが高いため、悪質な業者にとっても焦げ付きにくい格好のターゲットとみなされます。
融資を前提とした不動産投資や信用取引を持ちかける業者には、決して近づいてはなりません。賢く利益を上げるべき本分は医療の本業であり、知識や経験の乏しい金融・投資の世界に安易に踏み込むと、抜け出せないトラブルに巻き込まれる危険性があります。
