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揺らぐ保険診療。いざという時の事業外収入(DSS:危機管理)

[2026.05.17]

近年、日本の医療を取り巻く環境は劇的に変化しており、かつての「保険診療をしていれば安泰」という常識が通用しなくなってきました。今回は、不安定な時代を生き抜くために不可欠な、保険診療以外での収入確保、つまり事業外収入の重要性についてお話しします。

揺らぐ保険診療一本足打法の安定性

多くの先生方が実感されている通り、現在のクリニック経営は外部要因に大きく左右されるようになっています。かつての感染症拡大による行動制限では、多くの医療機関で患者数が激減し、所得が30パーセントから50パーセントも減少したケースが見られました。収入の8割以上を保険診療収入に頼る構造は、ひとたび患者さんの受診行動が変われば、立ち行かなくなるリスクを孕んでいます。

また、制度面での変化も経営を圧迫しています。リフィル処方箋の導入は、患者さんにとっては通院負担や費用の軽減というメリットがありますが、医療機関にとっては再診料や処方箋料の減少に直結します。患者さんは常に自分にとって負担の少ない選択肢を選ぶ傾向にあるため、保険診療のみを柱にした経営は、年々その「安定性」という前提が崩れつつあるのです。

「所得2000万円」の壁と資金繰りの現実

一般的に、クリニック開業後の成功の目安として所得3,000万円が挙げられることが多いですが、都市部では競合の激化や過大な設備投資により、2,000万円を下回るケースも少なくありません。開業から経営が軌道に乗るまでには3年から5年ほどの月日を要し、そこからさらに所得を大きく伸ばしていくことは、保険診療の枠組みの中では非常に難しいのが現実です。

また、帳簿上の黒字と手元の現金が一致しない点にも注意が必要です。年間の所得が2,000万円あったとしても、そこから税金を支払い、借入金の元金を返済していくと、自由に使えるお金は驚くほど少なくなります。納税資金を借りるような事態を防ぐためには、常にキャッシュフローを意識し、1000万円単位で「自由に使える資金」を蓄えておく必要がありますが、これには想像以上の時間がかかります。

いざという時に自分を守る事業外収入

クリニックの経営が厳しい時、あるいは将来の不安に備えるために、事業外収入の確保を検討することは、医師としての生活を守るための正当な防衛策です。具体的には、以下のような手段が考えられます。

  • 定期非常勤やアルバイトによる外部での収入確保
  • 産業医活動や公的な健診業務などの受託
  • 自費診療(自由診療)メニューの拡充による保険外収入の創出
  • 所有不動産の活用や講演・執筆活動

特に緊急事態で本院の減収が続く局面では、別の場所で稼ぐ力、つまりどこでも通用する医師としての技能が最大の武器になります。元金返済が進み、手元に残る資金が一時的にゼロになったとしても、他で稼ぐ手段があればクリニックを立て直すための時間を稼ぐことができます。稼げる時に稼いでおくという姿勢は、決して卑しいことではなく、経営を存続させるための誠実な努力といえるでしょう。

精神的な余裕が良質な医療を生む

経営に不安があると、どうしても「効率」や「収益」ばかりに目が行きがちになります。しかし、事業外収入によって経済的な基盤が安定していると、精神的な余裕が生まれます。その余裕こそが、患者さん一人ひとりと向き合う丁寧な診療を可能にし、結果としてクリニックの評判を高め、本業の安定にも繋がるという好循環を生み出します。

これからの時代は、オンライン診療やリフィル処方など、患者さんが「プラス」と感じる新しい仕組みを柔軟に取り入れる姿勢も求められます。保険診療の枠に固執せず、幅広い視点で収入源を多角化しておくことが、結果として先生の理想とする医療を長く続けるための近道になるでしょう。もし、具体的な経営改善や資金繰りでお悩みであれば、当オフィスへご相談ください。

 

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