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クリニック経営を揺るがすスタッフの勤務態度トラブル(DSS:トラブル110)

[2026.05.15]

クリニック経営において、スタッフのマネジメントは院長先生を最も悩ませる課題の一つではないでしょうか。スタッフ一人ひとりの振る舞いは、医院の評判に直結する極めて重要な要素です。今回は、現場で実際に起こった勤務態度の不良スタッフへの対応と、退職勧奨から自己都合退職に至るまでのプロセスについて詳しく解説します。

経営を揺るがすスタッフの勤務態度トラブルへの対応

医療現場では、チームワークが何よりも優先されます。しかし、残念ながら組織の調和を乱すスタッフが現れることもあります。今回ご紹介する事例のCさんは、周囲のスタッフから業務態度について多くの相談が寄せられる存在でした。具体的な問題点は以下の通りです。

  • 業務を最後まで完遂せず、途中で他のスタッフに丸投げしてしまう。
  • 自分の担当業務であっても、少し手間がかかるとすぐに他人に任せる。
  • 患者さんに対する言葉遣いや態度が荒く、接遇面で大きな不安がある。

このような状況が続くと、真面目に働いている他のスタッフに過度な負担がかかります。クリニックにとって、患者さんへの対応悪化は死活問題となります。周囲からは「忙しくなっても構わないから、Cさんがいない方がトラブルがなくて助かる」という声まで上がるようになりました。これは組織として非常に危険な兆候であると考えられます。

パワハラを回避するための慎重な業務指導と改善の限界

院長先生や上司として、問題のあるスタッフを放置することはできません。しかし、現代の労務管理においてはパワハラと受け取られないような慎重な対応が求められます。まずは言葉を選び、感情的にならずに具体的な改善ポイントを提示する指導を繰り返しました。

しかし、Cさんの場合は指導に対する反応も極めて不誠実なものでした。接遇の不備を上司が注意した翌日に突然欠勤し、出勤してきても態度は一切変わりません。数回にわたる指導を行っても改善の兆しが見えない場合、それは能力の問題ではなく、本人の資質や労働意欲の問題であると判断せざるを得ない状況です。指導の記録を詳細に残しておくことは、後の法的リスクを回避するために不可欠です。

円満な解決を目指す退職勧奨とスタッフの心理的変化

これ以上の勤務継続は、他のスタッフの離職を招き、最終的には患者さんに不利益を与えると判断し、退職勧奨を行うこととなりました。退職勧奨とは、雇用側が労働者に対して「退職してほしい」と打診し、合意形成を目指す行為です。解雇とは異なり、あくまで話し合いがベースとなります。

退職を促した際、Cさんは一転して「勤務を継続したい」と主張しました。これまで何度も指導を受け、周囲の信頼を失っている事実を伝えると「申し訳ありません」のひと言、具体的に自分の非を認める様子はありません。ここで重要なのは、毅然とした態度を貫くことです。情に流されて問題を先送りにすれば、事務部の崩壊を招くことになりかねません。

金銭交渉への発展と条件提示における判断基準

退職に応じる姿勢を見せ始めたCさんが次に行ってきたのは、執拗な金銭に関する交渉でした。本人の口から出たのは、反省の言葉ではなく以下のような要求ばかりでした。

  • 解雇予告手当相当額を支払ってもらえるのか。
  • 退職金の積み増しや特別手当はあるのか。
  • 有給休暇をすべて消化した上で退職できるか。

クリニック側としては、法的に支払う義務のない過度な積み増しに応じる必要はありません。しかし、早期解決を目指すために一定の歩み寄りが必要な場面もあります。今回のケースでは、退職金の上乗せについては一定のラインを設けて交渉を行いました。金銭の多寡よりも、早期の離脱を優先する判断が必要な場合もあります。

自己都合退職への転換による法的リスクの軽減

交渉の最終段階で論点となったのは、離職票の離職理由でした。当初はクリニック側からの退職勧奨として準備を進めていましたが、Cさんから再度連絡があり「自己都合退職にしたらどうなりますか」という打診がありました。

労働者側にとって、自己都合退職は転職活動において「会社とトラブルを起こしていない」という印象を与えるメリットがあります。クリニック側としても、後々の不当解雇トラブルのリスクを軽減できるため、自己都合退職として合意することは望ましい展開と言えます。最終的には、有給消化などの条件で歩み寄りを見せ、円満に合意書による解決を取り交わしました。

組織を守るための早期決断とトラブル対応の4ステップ

採用直後や試用期間中には見えなかった本性が、時間が経つにつれて現れてくることは珍しくありません。特に協調性のないスタッフは、一人いるだけで周囲の士気を著しく低下させます。このようなスタッフに対しては、以下の手順で早めに対処することが求められます。

  1. 具体的な業務指導の実施
    客観的な事実に基づき、具体的な改善点を提示して指導を行います。
  2. 指導内容の記録と保存
    指導内容とスタッフの反応を、必ず書面やログとして詳細に記録に残します。
  3. 退職勧奨の慎重な検討
    改善が見られない場合は、組織への影響を考慮して早急に退職勧奨の検討を始めます。
  4. 合意書による解決の締結
    法的な整合性を保ちつつ、合意書を取り交わすことで円満な退職を目指します。

勤務を継続させることが組織にとってマイナスであると判断したならば、早い決断が重要です。経営者の役割は、一人の問題スタッフを救うことではなく、真面目に働くスタッフと患者さんの安心を守ることにあるからです。

クリニックの労務管理に関するよくある質問

退職勧奨は強要にならないか 退職勧奨はあくまで「お願い」であり、本人が拒否する自由がある状態で行うものです。長時間拘束したり、大声で怒鳴ったりすれば退職強要として違法性を問われる可能性がありますが、節度を持った話し合いであれば問題ありません。
自己都合退職の合意後のリスク 本人が自発的に署名・捺印した退職願や合意書があれば、後から不当性を主張されるリスクを大幅に低減できます。書面を正確に残すことが、クリニックを守る最大の防御となります。
試用期間中の解雇について 試用期間中であっても、解雇には客観的に合理的な理由が必要です。通常の解雇よりは認められやすい傾向にありますが、やはり十分な指導と改善の機会を与えたという事実が不可欠です。

ドクターサポートステーションでは、クリニック経営に特化した事務長代行を提供しています。現場目線での労務管理やトラブル対応に強みを持ち、多くの院長先生のパートナーとして医院の健全な運営をサポートしています。

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