クリニック経営を左右する「三大経費」の基礎知識(DSS:開業)
クリニック経営(テナント)において、費用割合の高い三大経費(材料費・人件費・家賃)を適切に管理することは経営力強化の基本です。診療科別の経営分析データや地域相場と比較しながら、収入に応じた適正な経費割合を把握し、無駄のない安定した経営体制を築きましょう。
クリニック経営を左右する「三大経費」の基礎知識
クリニックの経費において大半を占めるのが、医薬品や診療材料などの「材料費」、「人件費」、「家賃(賃借料)」の3つです。経営分析データと比較することで、自院の経費割合が適正かどうかの目安がつかめます。
| 医薬品・診療材料費 | 患者数に応じて変動する経費。発注方法や在庫管理、適正な納入価格での購入管理が求められます。 |
|---|---|
| 人件費 | 収入に対する適正割合は30~35%程度。黒字化までの期間やスタッフ配置により大きく変動します。 |
| 家賃(賃借料) | 立地や面積で決まる固定費。地域の相場確認や、状況に応じた柔軟な賃料交渉がポイントとなります。 |
医薬品・診療材料費の適正化と納入価格の交渉
医薬品や診療材料費は患者数に応じて変動しますが、患者数が増えない中で費用割合が高い場合は、発注方法や在庫状況、購入価格が適正であるかを点検する必要があります。
医薬品や材料の納入価は一律ではありません。取引量や交渉力によって値引き率に差が生じ、年間で数十万円規模の違いになるケースもあります。医療事業として健全な収益を確保するためにも、定期的な価格の見直しと交渉が重要です。
人件費のコントロールと適正な人員配置
クリニック経営における収入に対する人件費の適正割合は30~35%が目安です。人件費割合を把握することで、事業継続に必要な目標収入を逆算することができます。
人件費はスタッフの配置人数や診療時間帯の設定によって変わります。また、大都市と地方では平均賃金に15~25%程度の地域差があるため、最低賃金や地域相場に見合った設定が欠かせません。余裕を持ったスタッフ体制の構築は、一定の黒字を安定して確保できるようになってから進めるのが賢明です。
個人クリニックと医療法人における法定福利費の違い
事業形態が個人か医療法人かによっても法定福利費の負担は大きく異なります。医師国保・国民年金の組み合わせから健康保険・厚生年金へ移行した場合、スタッフ1人あたり年間約20万円の負担増となります。社会保険の適用拡大など今後の法改正も見据えた計画が必要です。
家賃(賃借料)のリスク管理と減額交渉
家賃は立地条件や専有面積によって決まりますが、診療時間や診察可能な患者数には物理的な上限があるため、高い家賃に見合う十分な収入が得られるかを事前に精査しなければなりません。
賃貸借契約書には、社会情勢や物価変動に応じて賃料の協議が可能である旨が記載されているケースが一般的です。開業初期の立ち上がりの遅れや急激な減収など、経営環境が厳しい局面では、家賃減額交渉や専門会社の活用を視野に入れる必要もあります。
メディカルモール入居時の注意点
メディカルモールは集客面で有利な反面、周辺の賃料相場より割高に設定されていることが多く、10年以上の長期契約など貸主有利の条件になっている場合があります。地域相場より20%以上高い賃料は将来的な経営リスクとなるため、入居時の契約条件は慎重に確認・交渉することが大切です。
経営データの活用による経費削減と資金力の強化
経費の適正割合は総収入の規模や地域特性によって異なります。大都市と地方の数値を混同せず、自院の診療圏や規模に即した経営分析データを会計事務所などから入手して比較検討することが大切です。
クリニックの安定経営には、突発的な事態にも対応できる資金力が不可欠です。費用割合の高い三大経費を中心に無駄を削ぎ落とし、手元の現預金を厚くすることが強い経営基盤の構築につながります。
