これが自由診療を成功させる秘訣「自院の機能を高めるものを院長自身で営業する」(DSS:特集)
医療費抑制と競争激化に備えるうえで有効
近年自由診療を導入する診療所は増えている。その背景には将来に対する危機感がある。1つは保険診療の行く末だ。診療所には未だ病院ほどの医療費抑制策は実施されていないものの、今後はわからない。診療報酬の抑制だけでなく、患者の自己負担増につながる医療改革が行われると、「どうせお金を支払うのなら」と自費を希望する患者が増えることも考えられる。
危機感としては競合の存在もある。地域で競合が増えると必然的に1診療所の保険診療の患者は減る。こうした状況下で経営の継続性を確保していくには、患者1人あたりの単価を上げるという戦略も必要になり、その手段として自由診療は有効だ。また、内科をはじめ一般的には差別化を図りにくい診療科においても、自由診療によって他院との違いを打ち出せる点もメリットと言える。
自院の診療の質を上げるものを選ぶ
自由診療に関しては美容やアンチエイジングなどが根強く人気があるが、何をやるかは自院の診療特性をベースに考えるのが得策だ。たとえば、女性患者が多ければ美容に関するニーズはあるだろうし、高齢者中心ならアンチエイジングが求められているかもしれない。生活習慣病だと、薬以外の治療を希望する患者は少なくないので食事や運動は好まれるだろう。
なお、生活習慣病患者は多いし、予防重視の政策も打ち出されていることもあり、行動変容につながるような取り組みは有望だ。それはゲーム性のあるアプリかもしれないし、コーチングかもしれない。そのほかスポーツクラブやRIZAPと連携するという方法もある。どんな自由診療を始めるかは、▽自院の診療スタイルにどんな機能を加えれば、医療の質を上げられるか、▽自院にはどんな患者が多いか、の2つを基本に考えると大きな間違いはないだろう。たとえ医療の質を上げられるものでも、患者の大半が低所得層なら成功させるのは難しい。地域性を考えることも重要だ。
自由診療への誘導は院長が行う
最後に失敗しないためのポイントとして「院長(医師)の姿勢」を挙げる。保険診療の患者を自由診療に誘導するうえで、一番重要なのは医師の働きかけである。「この医師は本当に自分のことを考えてくれている」と思ってもらえなければ、保険診療できた患者が自由診療を受けようとは思わない。成功している診療所では医師によるCSを意識したアプローチが徹底されている。自由診療への誘導を受付や看護師に任せているようでは、成功を望むのは難しいと言える。