いやあまいった?「個性」その2 2010年4月(DSS:ルート50)
【いやあまいった「個性」:その2】
お久しぶりの登場です。なかなかこの話の続きを書く心の余裕が無くこの日まで(約3ヶ月半)が過ぎてしまいた。私といえば相変わらずの焼き鳥や通いでお店も全く変わりません。しかし、たまには浮気がしたいもので先日某駅の反対側の焼き鳥や(正真正銘の鳥肉)に行ってきました。鳥肉おいしくいただきましたがお店がとても清潔感があり、長くいることができませんでした。これどうしようもできません。やっぱり落ち着かないんですよね、私にはあのコキタナサが必要です。
先日、焼き手は3人いると申し上げましたが、その三人にはそれぞれおしゃべりに特徴があり、お客さんのとの会話を盗み聞きしている(カウンターだけなので聞きたくなくても聞こえてしまう)とそれだけで酒の肴になってしまうくらい面白い時が多々あるのです。
ミクさんは三人の中で一番高齢者でありながらとても気さくで面白い人です。調子にのってくると「シュワッチュ」の連発で、時には手を振りながら(さすがにウルトラマンみたいに交差はできない。だって焼き鳥焼いているから)焼いてくれます。お客さんは誰一人「それウルトラマンのまね?」なんていうような人は今まで誰一人見たり聞いたりしたことがありません。私だって聞きたいけど聞けないのです。
不思議そうな顔している人もいません。きっと心の中でウルトラマンだよなウルトラマン、ウルトラマンが焼き鳥焼いてる姿って信じられないよね!と思っているに違いありません。しかし、ウルトラマンが必要であることがわかる時があります?それは、ここのお肉は基本的に厚みが薄いので、割りと高温で焼くため長く火で炙ると硬くなって肉汁が少なくなりおいしくなくなるのです。よってウルトラマンは3分?が時間だった?と思うのですが、その為に早く焼かなければならないのでこの「シュワッチュ」と言う掛け声を利用されてるのではないかと真剣に考えるのです。
そんなばかなとお考えになる方がひょっとしたらいらっしゃるかもしれませんが、その雰囲気を見たとたん、必ず納得されると思うのです。だから誰もお声をおかけできないのです。(笑い)焼き方は焼き手と時間の勝負です。真剣さが違うのです。
そして何かやろうとした時に必ず発生している自分に驚くはずです。よしがんばろうとする時やよっしゃここで踏ん張るぞ思ったときに「シュワッチュ」と思わず言って笑っている自分に気がつくのです。この影響力はミクさんならでのものであると私は硬く信じて疑いません。
そして年齢は少し下だとは思うのですがめがねのタケさんがいます。このタケさんもあまのじゃくのタケさんと私は心の中で叫んでいます。たとえばお客さんが「美味しいですね」と聞こうもんなら、「それは素材しだいですよ、その日によって違うんだから」「美味しいも美味しくないも食べてみなけりゃほんとにわかんないですよ!はい」とくる。さらにお客さんが「でも美味しいですよ」と言おうもんなら、待ってましたとばかり「美味しくないですよ、はい、ほんとその日によって違うんだから、どうしようもできないですよ」と切り替えされる。そうするとさすがにお客さんもそこからは話せなくなってしまって、ただ焼き鳥を食べるだけとなってしまうのだ。さらに食いついて話そうとするお客さんには一言「いやあー参った!」「アー疲れた」と連発銃でパンパンと打たれあっという間に火達磨となり、二度とその日は会話できないようになってしまう。
でも良く考えると全席含めて20人くらいのお客さんから頼まれる注文を一人で焼くのだから、いちいちお客さんの問いかけに答えてしゃべっていては、焼きあがりも失敗してしまうだろうし、美味しくも焼けないのである。また夏になると火の前は蒸し風呂状態となり汗だくでになって思考回路なんて止まってしまうらしく(冬でも半袖)何かにつけて「いやあー参った」の連発となる。また時にはこのお店の暗黙のルールをご存知でないお客さんが来たりして(当初私もそうだったが)一度に何種類もの焼き鳥を頼むと一発「いやあ参った。」と言った後に「お客さーん!まず2種類食べてから頼んでください。頭悪いから覚えられないんですよ、冷めるとおいしくありませんから」とお小言を頂戴する。そのやり取りに常連やお客さんたちは何事もないような顔をしていながら(心のなかでは言われてる、言われてる洗礼を受けている、俺も言われたんだよ!)と黙々とまたは下向いてニヤニヤしながら飲んだり食べたり全く知らん顔、でもきっとこれがここでの楽しみでもありこれに慣れないお客さんはここの常連にはなれないのである。
そして最後が金髪ちゃん(今は茶髪になってしまったが)たぶん20代後半から30代前半である。今風の若者なのであまり特徴はないのだが、やさしいお兄ちゃんである。焼き手としては今一歩であるが、一番融通を聞かせてくれる。当初はなかなかお客サンとのやり取りはどちらかと言うと下手であったが、今ではリズムも出てきて随分良くなってきた。この人の人生は焼き鳥で終わるのかなと?(これで良いのだろうか)とも思うこともあるが大きなお世話かもしれない。そのうちに何か言葉を発しないかと期待して見ているが今のところ何もない。これも特徴と言えるかもしれないがやっぱり欲しいその一言がと思ってしまうのです。「ヘンシーン」 とか「なっちゃって」とか期待しちゃうがこの言葉はやはりわれわれの年代だろうから斬新は発生を心待ちにしているこの頃である。